人工呼吸について若手医療従事者でも理解できるように解説

悩んでいる人
人工呼吸器をつけた方に接する機会があるけど、人工呼吸器って難しくてよくわからない。
数字や英語が多いけど何を見たらいいの?
人工呼吸器をつけた方にリハビリってしていいの?
そんなお悩みを解決します。
本記事の内容
・人工呼吸器の概要(見るべきポイント)を整理して解説
・人工呼吸器を装着することでのリスクとその対策について解説

この記事の信憑生

この記事を執筆しているこうペイは急性期病院で約12年間第一線で従事し、これまで約3000名もの患者さんを治療しています。また、院内の人工呼吸器管理チームに所属しています。私個人としては、認定理学療法士(呼吸)、3学会合同呼吸療法認定士、呼吸ケア指導士の資格を取得し、今現在も日々臨床での業務に従事しています。

この記事を読んでいる方は、人工呼吸器に不慣れな医療従事者の方が多いと思います。医療従事者でなくとも理解できるような内容で人工呼吸器についてまとめていきます。

 

本記事を読み終えると、人工呼吸の概要と最低限確認しておくべき項目が明確になり、人工呼吸器についてイメージがしやすくなります。焦ることなく、落ち着いて確認すべき項目を整理でき、患者さんの状態を把握することができるようになります。

 

私は理学療法士であり、特に普段人工呼吸器に接することの少ない理学療法士や、経験年数の浅い理学療法士には特にオススメの記事です。

そもそも人工呼吸とは

そもそも人間自身が行う呼吸(自然呼吸)とは、横隔膜をはじめとした呼吸筋が収縮することで、胸腔内を陰圧にすることで空気の出入りを行なっています(陰圧換気)。

呼吸の基本的な解剖について動画でわかりやすく解説されていますのでこちらをご参照ください。

 

自然呼吸に対し人工呼吸は、機械から空気を送ることで肺へ直接空気を送る呼吸(陽圧換気)となります。

そして人工呼吸器とは、簡単に言えば管を通して気道内へ空気を送る送風機のようなものです。

江頭2:50さんがネタとして送風機を咥え込んで鼻から空気を逃がしていますが、原理としては鼻から抜けないように、体に適した圧力や量、タイミング、酸素濃度を調整して同じことをやっているわけです。

えがちゃんの場合とは異なり、体に人工呼吸器もやみくもに身体へ空気を送っているわけではありません。設定に従って体の状態を人工呼吸器自体が確認しながら送っているわけです。

こうペイ
エガちゃんは普通に面白いですけどね

次の項目で人工呼吸器がどのような設定で、何を確認しながら体に空気を送っているのかをわかりやすく解説します。

人工呼吸器の設定で確認すべき4つのポイント

では人工呼吸器について不慣れな方が、人工呼吸器の確認しておくべきポイントを解説します。

簡単にいうと、

どんな空気を、どれだけ、どんな時に送っているか

を確認すればいいわけです。

 

 

「どんな空気を、どれだけ、どんな時に送っているのか」をより詳しく見てみると以下のようになります。

 

 

どんな空気を、どれだけ、どんな時にを設定することで、肺に空気を送るためのルールを設定しているわけです。人工呼吸器はその設定に従って空気をからだへ送っているわけです。

 

では肺に空気を送るためのルール、「どんな空気を、どれだけ、どんな時に送っているのか」を詳しく見ていきましょう。

 

どんな空気を?は酸素濃度(FiO2)を確認する

空気を送る際には、圧縮空気と酸素を混ぜた上で加湿して肺内へ送るわけです。

 

酸素がどれだけの濃度なのか酸素吸入濃度(fraction of inspiratory oxygen: FiO2)を確認しておきましょう。

 

酸素濃度は「%」で表示されることが多いですが、表記は%をではなく0.00などの表記が良いと思います。

例)FiO2:35%の場合、表記は0.35

 

また、下記の表は鼻カヌラにおける酸素吸入濃度の目安です。表を参照していただければ、どれだけの酸素が投与さえれているかおおよそのイメージはつくかと思います。

鼻カヌラにおける酸素吸入濃度
酸素流量(L/min) 酸素吸入濃度の目安(%)
24
28
32
36
40
44
注意!
患者さんの経過を追う場合、「FiO2が減量になっているからよくなっているんだな」と思うことは間違った見解に足ることがあるため注意です。
あくまでもFiO2は人工呼吸器の設定です。患者さんの状態が良くなろうと変わらないであろうと設定は変更できます。
患者さんの状態(酸素化)を把握するためには、P/F ratio(ピーエフレシオ)を確認しましょう。
※P/F ratio(ピーエフレシオ)については後日記事を執筆しリンクします

どれだけ?は従量式か従圧式を確認する

人工呼吸器は設定に従って身体へ空気を送っているわけです。どれだけの量の空気の送るのかは2種類の方法によって決まってきます。

従量式(量規定換気)(VCV:Volume Control Ventilation )

従量式は体内(肺内)へどのくらい空気を送るべきかを、量(〇〇ml)で決める設定です。

例えば、500mlと設定した場合、基本的には500mlの空気を体内へ送るわけです。

従量式の場合は確実に換気量が確保できるというメリットがある反面、圧力を無視して量を入れるため圧損傷のリスク(風船で例えると割れてしまうこと)を伴います。

従量式
利 点:確実に換気量を確保できる
リスク:圧損傷(気胸)の可能性

従圧式(圧規定換気)(PCV:Pressure Control Ventilation )

重圧式は体内(肺内)へどのくらい空気を送るべきかを、圧力(〇〇cmH2O)で決める設定です。

風船に空気を送り込む場合、大きくなればなるほどその内圧は高まります。肺も同様に、空気を送り込むと送り込んだ空気量に伴って内圧が高まってきます。

例えば、内圧が10cmH2Oまで空気を送る設定(PS:pressure support、プレッシャーサポートという)にすると、基本的には内圧が10cmH2Oになるまで量は関係なく空気を体内へ送るわけです。

従圧式は圧損傷(風船で例えると割れてしまうこと)のリスクが少ない反面、容易に内圧が高まるような場合(痰がたまって容易に圧力が高まる、間質性肺炎など肺が硬くなり広がりにくくなる場合)には身体へ送る空気量が減少してしまい、換気不足となる可能性があります。

従圧式
利 点:圧損傷のリスクが少ない
リスク:換気量不足の可能性

どんな時?は機械依存か自発呼吸かを確認する

どのような空気を、どれだけ送っているのはを整理しました。

ここからはどんな時?(タイミング)について解説します。

調整換気か部分補助換気か

人工呼吸器にはトリガーがあります。

トリガーは患者さん自身の呼吸(自発呼吸)が起こったときに、自発呼吸の吸気を感知して人工呼吸器が空気を体内へ送る機能です。

つまり、患者さんの呼吸にどれだけ合わせるかを設定するわけです。

完全に機械の設定で呼吸を調整つすることを調節換気(CMV:Controlled Mechanical Ventilation)と言います。

逆に患者さんの自発呼吸のみに合わせて空気を送ることを部分補助換気(PTV:Patient Trigger Ventilation)と言います。

理学療法士が接する臨床の現場では機械に完全に呼吸を委ねている状態はほぼありません。

実際は、呼吸をある程度人工呼吸器で助けてあげるために、患者さん自身の呼吸に合わせて部分的に換気の補助を行う設定になっていることがほとんどです。

部分補助換気の場合、どれだけ補助しているか

部分補助換気にも多くの設定があります。今回の項目でそれぞれの設定の詳細は避けますが、以下の設定を見た場合には基本的に患者さんの自発呼吸のみに合わせる設定となっています。

PSV(pressure support ventilation)

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure

SPONT(spontaneous breathing:自発呼吸

これらの設定は基本的には自発呼吸に合わせて人工呼吸器が空気を送る設定となっています。

機械での換気を減らし、患者自身の呼吸へ設定を緩めているとみれると思います。

常に圧はかかっている(PEEP)

人工呼吸器を確認する上でもう一つ逃してはならないことがあります。

それが呼気終末陽圧(PEEP;positive end expiratory pressure )です。

このPEEPの意味を理解するためには機能的残機量(FRC:functional residual capacity)について理解する必要があります。機能的残機量とは安楽な呼吸で息を吐いたときに体の中に残っている空気の量のことです。

FRCがあることで、息を止めた状態でも肺はしぼまずに呼吸を維持できるわけです。

また、FRCは体位によって変化すると言われており、座位や立位から臥位になると、横隔膜は 4cm ほど挙上し、この挙上は機能的残気量(functional residual capacity:FRC)を 15 〜 20%減少するといわれている。

※下記の文献より図表を引用

本題のPEEPに戻りますが、重症患者であればあるほど臥床していることが多い上に、炎症の起こっている肺では肺胞が水浸しになったりしぼんでしまうことがあります。

しぼんだ風船を膨らませるにはかなりの圧力が入りますよね。そのため常に肺を膨らませておくために持続的に圧(PEEP)をかけておくわけです。

このPEEPがどれくらいの圧でかかっているのかを把握しておく必要があります。

どれくらいの圧(PEEP)に注意すべきか

参考になる資料としては以下のものを参照すると良いでしょう。

2017年に公になった日本集中治療医学会から発行されている集中治療における早期リハビリテーション ~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~では

早期離床や早期からの積極的な運動の開始基準では

PEEP<10 cmH2O、

となっています。

 

また2018年に発表されたPADISガイドライン1)では、

FIO2<0.6 かつPEEP<10

 

つまり、PEEPが10cmH2O以上か未満かどうか

というところは確認しておくべきでしょう。

人工呼吸器のリスク、注意すべき点について解説

人工呼吸器関連肺炎(VAP;Ventilator-Associated Pneumonia )に注意

人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、人工呼吸器管理を受けている患者の8〜28%の経過を悪化させます。また尿路感染症や皮膚感染症などの死亡率が1〜4%の範囲であることとは対照的に、VAPの死亡率は24〜50%あり、地域によっては76%にも達するという危険性を孕んでいます2)

つまり人工呼吸器患者に他触る医療従事者としてはこのVAP予防の徹底は重要な課題となります。

VAP予防については2010年に日本集中治療医学会から「人工呼吸関連肺炎予防バンドル 2010改訂版 (略:VAPバンドル)」として発行されています3)

VAP予防に関しては以下の5つの項目が挙げられています。

  1. 手指衛生を確実に実施する
  2. 人工呼吸器回路を頻回に交換しない
  3. 適切な鎮静・鎮痛をはかる。特に過鎮静を避ける。
  4. 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する
  5. 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない

 

理学療法士として直接的に関わる項目としては、⑤人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しないことが重要になると思います4)

人工呼吸器の専門的な良書はこちら

人工呼吸器について専門的な解説は下記の教科書がオススメです。

Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理〜人工呼吸器設定の根拠を病態から理解し、ケーススタディで実践力をアップ!
「患者にやさしい人工呼吸管理」を行いたい方は必読! 病態に応じた人工呼吸器の設定や調節,トラブルの対処が根拠から身につきます.軽妙な語り口でスラスラ読めて,専門書では難しい…という初学者にもオススメ!

引用文献

1)Devlin JW, Skrobik Y, Gelinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018; 46(9):e825-e873.

2)

3)

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